日本毒性学会学術年会
第45回日本毒性学会学術年会
セッションID: P-54
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優秀研究発表 ポスター
肝障害回避を目指したヒトアルデヒドオキシダーゼが還元するニトロ基含有薬物の構造学的特徴の解析
*小木曽 巧朗深見 達基三代 憲司小西 慶吾Jeffrey P JONES中島 美紀
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抄録

【目的】構造内にニトロ基を有する薬物には副作用として肝障害が報告されているものが多く存在する。当研究室では、ヒト肝臓に発現しているaldehyde oxidase 1 (AOX1) がニトラゼパムやダントロレンのニトロ基還元反応を好気性条件下で触媒し、反応性代謝物であるヒドロキシルアミン体を生成することを明らかにしている。本研究では、ニトロ基還元反応におけるAOX1の基質認識性を明らかにし、肝障害発症につながる薬物の構造アラートの特徴を明らかにすることを目的とした。

【方法】ヒト肝ミクロソーム (HLM)、サイトゾル (HLC) およびヒトAOX1発現系を酵素源とし、11種類のニトロ基含有薬物 (アゼルニジピン、クロナゼパム、トルカポン、ニフェジピン、ニメスリド、ニメタゼパム、ニモジピン、ニルタミド、フルタミド、フルニトラゼパムおよびメトロニダゾール) の還元酵素活性をLC-MS/MSを用いて測定した。その際、還元剤を用いて有機合成した代謝物を標準物質として使用した。

【結果および考察】AOX1が局在するHLCにおいてクロナゼパム、ニメスリド、ニメタゼパム、ニルタミド、フルタミドおよびフルニトラゼパムの6種類の薬物の還元酵素活性が認められ、AOX1の還元酵素活性を促進するN1-メチルニコチンアミドの添加により有意な酵素活性の上昇が認められた。一方、HLMを酵素源とした際はシトクロムP450の補酵素であるNADPHを添加しても還元酵素活性はほとんど認められなかった。また、ヒトAOX1発現系においてもこれらの還元酵素活性が認められたことから、AOX1が還元反応の責任酵素であることが支持された。上記以外の5種類の薬物では、いずれの酵素源および補酵素においても還元酵素活性は認められなかった。AOX1により還元された薬物はいずれもニトロベンゼン環のpara位に電子供与基を有する特徴が認められた。これらの薬物は全て肝障害を引き起こすことが報告されていることから、AOX1による還元反応が薬物毒性の鍵となる可能性が考えられた。

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