日本毒性学会学術年会
第45回日本毒性学会学術年会
セッションID: P-59
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優秀研究発表 ポスター
天然脂肪酸を由来とする新規抗がん物質の作用機序解析
*安藤 さえこ松本 晴年深町 勝巳酒々井 眞澄
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抄録

私たちは天然中鎖脂肪酸をリードとしピペリジンをもつ新規抗がん物質palmitpoyl piperidinopiperidine (以下PPI) を創製した。PPIはヒト大腸がん細胞株および動物モデルにおいて転写因子STAT3の活性抑制、アポトーシス誘導、血管新生抑制に作用することを見いだした (2017年日本毒性学会)。構造活性相関解析にてPPIの腫瘍選択性にはピペリジンが重要であることがわかったので、我々はピペリジンのN (窒素) 求核性を向上させた新規化合物コード1112および1121を合成した (2018年特許審査請求)。本研究では2つの物質の効果と作用機序を解析した。ヒト大腸がん細胞株HCT116に対する1112、1121およびPPIのIC50値はそれぞれ0.17、0.19、1.67 µMであった。In silico解析でSTAT3への親和性を解析した結果、1112、1121、PPIおよび既存のSTAT3阻害剤STA21のドッキングスコアはそれぞれ39、49、26、14であった。1112および1121はHCT116細胞株に対してpSTAT3、Bcl2およびVEGFのタンパク発現を用量依存的に抑制した。FACS解析を行った結果、1112および1121ばく露により、それぞれ58%、57%のsub G1フラクションが増加した。これらの実験結果より化合物コード1112および1121はSTAT3に結合することが予測され、少なくとも本細胞実験条件下でリン酸化抑制とアポトーシス誘導に関わることがわかった。現在、これらの化合物がSTAT3転写活性およびアポトーシス関連分子・細胞周期関連分子にあたえる影響を解析している。

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© 2018 日本毒性学会
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