日本毒性学会学術年会
第45回日本毒性学会学術年会
セッションID: S2-1
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シンポジウム2
子どもを対象とした中枢神経毒性問題の動向
*菅野 純
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抄録

 胎児期、新生児期、幼若期(以上、子ども期)における化学物質の低用量暴露が成熟後に誘発する中枢神経系への影響としての情動認知行動異常を、定量性をもって捕捉することが可能となり、また、その異常誘発メカニズムの一端が明らかになりつつある。本シンポジウムは、昨年に引き続き、それらの成果を報告するものである。

 従来の毒性を「外来性化学物質が標的分子に作用して機能障害を引き起こし有害性を現す」のに対し、シグナル毒性は、「外来性化学物質が受容体に結合することで、間違った種類のタンパクを、間違ったタイミングで、間違った量、標的細胞・組織に作らせるという間違った指令(シグナル)を出してしまうために有害な作用が生じる現象」との立場を取るものである。この様な毒性の場合、恒常性維持機構が働く成熟個体では可逆的な反応に留まる可能性がある。しかし、シグナルをその発生発達成熟に「臨界期」もって使用している中枢神経系においては、不可逆的な影響が残る蓋然性が高いことが指摘される。

 シグナル毒性を子ども期の中枢神経系に発揮するものとして、そこに発現している各種受容体に結合し「シグナルかく乱」を来す全ての化学物質が挙げられる。特に、神経伝達システムに関わる化学物質、例えば、向精神薬や農薬の一部が重要である。その他、大気中の微粒子のうち、PM2.5 やUltrafine Particles(UFP)による嗅神経系を介した中枢影響を唱える研究もある。

 これらの中枢影響は、従来のFOB試験では検出する事が困難であり、情動認知行動試験が必要となる。しかし、毒性評価体系への組み込みを考えると、標準的な陽性対照が完備していない事と、測定機器が規格化されていない事が問題となる。ここでは、イントロダクションとして今後のバリデーションにとって重要なこれらの問題点をまとめ、その対応策を考察する。

(厚生労働科学研究費補助金による)

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