日本毒性学会学術年会
第45回日本毒性学会学術年会
セッションID: S20-3
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シンポジウム20
心毒性の性差
*黒川 洵子
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抄録

 薬の効き方や副作用には男女差があることが明らかとなってきており、生物医学研究では早急な対応が求められている。NIH グラントによる研究計画書に動物実験を含む場合、動物の取扱に関しNIHの方針に準拠することが求められる。2015年6月には、ヒトおよびほ乳類を用いた全ての研究計画において、性による結果の違いの可能性を議論することをNIHグラント申請の要件とする声明(NOT-OD-15-103)が発出された。2016年施行に向けて、米国の各大学グラントオフィスは対応を迫られた。今後、その流れは、我が国にも波及すると思われるので、臨床を対象とした研究だけでなく、基礎薬学研究においても注視すべきである。

 我々の研究室では、主に循環器領域における男女差に注目した研究を遂行している。例えば、薬剤による心室再分極遅延(QT間隔延長)リスクや心臓突然死発症率は女性で高いことが知られる。この性差には心電図QT間隔が成人女性で長めであることが関連しており、思春期や性周期における変化から性ホルモンの影響が示唆されてきた。我々は、その分子メカニズムとしてNOを介した心筋細胞の性ホルモンシグナルが関与しているのではないかと提唱している。しかし、このような基礎研究の結果を如何にして生体反応における解釈に反映させるかというトランスレーションについては、いまだ明確なストラテジーは存在しない。今回のシンポジウムでは我々が行っている独自の取り組みを紹介し、今後の課題についての議論を深めたいと考えている。

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