日本毒性学会学術年会
第45回日本毒性学会学術年会
セッションID: S20-4
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シンポジウム20
安全性分野における性差の扱いについて
*山田 久陽
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抄録

安全性分野における性差の扱いについて、企業研究の面から昨今の動向を紹介し、次に実務で直面する性差の例として、ラットの腎機能の性差について取上げる。医薬品の安全性試験は、製造販売承認申請に必要なものは、原則的にGLPおよび毒性試験法ガイドライン下で実施される。毒性試験法ガイドラインでは、一般毒性試験、がん原性試験など多くの動物を使用する試験で、通常、雌雄の使用が規定されている。一方、医薬品開発の早期のステージでは、開発候補化合物を見出すために探索的な短期安全性試験が実施される。このステージでの検討は、各々の企業がこれまでの経験等により独自に構築するもので、各社の戦略の違いによって雌雄の使われ方に違いが出てくる。これに関して、2015年に数社の企業を対象とした調査結果があり、安全性試験における各種動物の雌雄の使用比率とその理由について紹介する。結論として、開発早期ではコストやスピードが重視され、片性で評価を実施する企業が多い結果となっている。次に実務面から、安全性評価で頻繁に使用されるラットについて腎機能の性差を概説する。ここでは、腎臓の形態、トランスポーター、腎毒性薬物に対する感受性、性ホルモン受容体の局在、さらに腎毒性の評価に使用される尿中バイオマーカー等について取上げる予定である。腎毒性の検出は、非観血的測定法として、生体への負担の少ない尿分析が実施されてきている。従来から使用されてきた尿中バイオマーカー(TP、Alb、GLU、LDH、ALP、LAP、γ-GTP、NAG、β2-MG)と最近の尿中バイオマーカー(L-FABP、Cys-C、Kim-1、NGAL、Clusterin)のほとんどに性差が見られ、去勢による影響についても示した上で、ラット尿中バイオマーカーの性差が発現する要因について考察する。

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© 2018 日本毒性学会
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