日本毒性学会学術年会
第45回日本毒性学会学術年会
セッションID: S22-3
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シンポジウム22
新規農薬の毒性病理学的評価のトピック - 農薬評価における毒性病理学専門家の役割
*義澤 克彦
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抄録

 近年、農薬評価におけるトピックとしては、現時点での最新の科学的水準で安全性を定期的に評価する制度(再評価制度)の導入やイヌの慢性毒性試験の必要性などいくつかの話題が持ち上がっている。これらの話題とは直接関連はないが、これまで評価してきた際に、毒性病理学専門家として私が気づいた点についていくつかお話ししたい。古くから使用されている農薬や海外製品を評価する場合に、試験間の病理所見用語の不統一性や現在では使用しないような古い所見用語が使用されていることをしばしば経験する。この場合は、可能な限り、試験間で統一性があり、現在推奨されている所見用語を使用することが望ましい。北米、欧州、英国及び日本毒性病理学会(JSTP)が推進している毒性病理用語・診断基準の国際統一化計画(INHAND)がげっ歯類についてはほぼ終了した。また、げっ歯類以外の動物種(イヌ・サル・ウサギ・ミニブタ・魚類)について現在進行中であり、INHAND用語あるいはJSTPが編集した新毒性病理組織学に掲載されている病理所見用語を使用すべきであろう。次に、発がん性試験に関しては医薬品評価に比べて第三者病理ピアレビューが実施されていないことが多い。病理組織学的所見のピアレビューは試験結果の解釈の質並びに信頼性を確保し、試験成績に大きな影響を与え得る重要な手法であるため、今後必要になってくると思われる。発がん性試験で陽性の場合はそのメカニズムを明らかにするために様々な試験が実施される。これに比べ、毒性変化に関してはメカニズムが不明であることも経験する。農薬評価で観察された眼球毒性(角膜炎・角膜腫瘍、網膜変性・萎縮、白内障、縮瞳など)の事例を交えて紹介したい。これらの点を解消していくためにも、今後も毒性専門家と毒性病理学専門家とのさらなる協力体制が必要になると思われる。

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