日本毒性学会学術年会
第45回日本毒性学会学術年会
セッションID: S22-4
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シンポジウム22
毒性病理用語の国際標準(INHANDおよびSEND_CT)の動向と現状
*岩田 聖安齋 享征大石 裕司
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抄録

 FDA医薬品申請におけるSEND Data Set作成では,毒性病理用語の国際標準化が求められている.SENDデータの毒性病理用語としてはINHAND(International Harmonization of Nomenclature and Diagnostic Criteria)が推奨されている.INHANDは米国STPが2005年に提案し,欧州・英国・日本の各毒性病理学会が協力してラットマウスの増殖性および非増殖性病変の検討が開始された.現在約8割の臓器については用語と解説が公表されている.これらワーキングループは臓器ごとで活動しているため,科学的には正しいが, 臓器間で用語の違い(Pigmentation / Deposit of pigmentなど)が少なからずある.

 一方,CDISCでもSENDの用語チームが立ち上がり,SEND_CT(Controlled Terminology)としてウェブ上で用語を公開し3か月に一度更新している.INHANDとSEND_CTは相関して活動することにはなっているが,実際のSEND_CT用語を見ると,非腫瘍性病変の用語数がかなり少ない.これは,主にINHANDにある組み合わせ用語の多くが省略されてしまったためである.例えばINHANDにあるInfiltrate, inflammatory cellは省かれInfiltrateという用語しかない.Infiltrateを基礎用語としてinflammatory cellを形容詞としようと考えるITの人たちのアイディアに思える.しかし,実際には毒性評価の現場でInfiltrateだけを基礎用語として評価することはないと思われる.このようにSEND_CTはまだ完成されたものではない.一方でCDISC Implementation Guide3.1がスタートすればSEND_CT用語にない用語はStudy Data Reviewer's Guideに記載しておく必要がある.

 結局,現状では毒性病理用語は1.基本的にはINHANDを活用し,臓器間で違う用語はSEND_CTを活用する,2.CDISC IG 3.1以降のSEND Data Set作成ではSEND_CT用語にない用語はStudy Data Reviewer's Guideに記載する必要がある,3.将来SEND_CTが充実すれば優先的に辞書として活用する,これら3点が肝心である.なお,日本毒性病理学会ではINHANDとSEND_CTと組み合わせた組織用語や肉眼所見用語を含めたGlossary案を検討中である.

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