日本毒性学会学術年会
第45回日本毒性学会学術年会
セッションID: S4-3
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シンポジウム4
First in Human の過去・現在・未来~治験担当医による被験者リスク最少化への挑戦~
*藤田 朋恵
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抄録

わが国の治験(臨床試験)のリスクアセスメントについて過去30年間の議論と今後10年間の発展について、First in Human (FIH)を中心に考えてみたい。FIHとは医薬品をヒトへ初めて投与し、ヒトでの初期の安全性や忍容性を推測することを目的の一つとする試験である。1980年代、医薬品の安全性、毒性評価に関してGLPが導入され、その後臨床試験の倫理指針を作る動きが始まった。1989年、第三者による審査と被験者の自由意思による参加を定めた臨床試験の基準が公表された(旧GCP)。1997年、ソリブジンの薬害事件を契機に法律に基づく省令として公布された(新GCP)。その後ICH-M3ガイドラインにおいて、FIHを行うために必要な非臨床試験の種類や実施時期が示された。2006年、イギリスで行われた健康者のFIHで抗体医薬品の初回投与後に被験者全員がサイトカインストームを発症する事件が発生した。欧州の規制当局(EMA)のガイドラインを受けてわが国では2012年にFIHリスク低減のガイダンスが出され、無毒性量に加え最小薬理作用量に基づく初回投与量の推定、逐次投与、十分な投与間隔などが示された。2016年、フランスで行われたFIHで低分子薬物の反復投与後に死亡者が出るという重大な事件が発生した。EMAによりリスク低減のための新しいガイドラインが出され、最大投与量と曝露量、最大投与期間、半減期と作用時間、反復投与時の蓄積性などを配慮することが示された。2017年、臨床研究法が公布され臨床研究も法律の対象となった。今後の被験者リスク最小化を目指したリスクアセスメントは、非臨床・臨床専門家、治験担当医の協力関係の下、リスク予測のためのバイオマーカーの活用、試験デザインの工夫、試験中に得られた情報に基づく試験デザインの柔軟な変更、有害事象の予測に基づく救急体制整備などへ発展していくと考える。

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© 2018 日本毒性学会
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