日本毒性学会学術年会
第45回日本毒性学会学術年会
セッションID: S4-4
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シンポジウム4
医薬品開発における実験動物福祉
*海野 隆
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抄録

医薬品が適用される患者の安全性を担保するためには、実験動物を用いた非臨床毒性試験およびヒトを対象とする臨床試験に基づく。

かつては各国には独自の毒性試験法ガイドラインが存在し、それぞれの国に合わせて、毒性試験が行われることも少なくなく、ハーモナイズが必要となった。

そこでICHによりガイドラインが作成され、無駄な動物試験や重複した動物実験が回避されるようになった。その後Russell とBurchが“The Principles of Humane Experimental Technique(1959)”において提唱した3Rsの理念を受けて、実験動物福祉にも関心が向けられる様になった。

これは動物実験福祉を考慮する事により、非臨床試験のコスト削減と効率化にも寄与する結果となるものであった。

動物愛護活動家のなかには「動物実験は残酷」という理由だけで反対しているが、偏る意見を迎合する集団により、臨床試験への参加者や患者の安全性を損なうことは許されない。

しかしながら実験動物福祉に配慮しつつ、実施される動物実験の必要性と意義を吟味し、最小限の毒性試験を精度高く有効に実施することを、常に念頭におくべきである。

現実には医薬品開発においてガイドラインが求めるパッケージを満足するために毒性試験が行われることがある。安全性試験は臨床試験へ参加する被験者への有害性を予測・回避するために行われるものである。

将来、生命科学研究やAIの進歩により、医薬品開発の戦略の転換は余儀なくされ、臨床試験は不可欠ではあるものの、in vivo毒性試験のウエイトは徐々に減少し、最終的にその実施の意義が失われるであろう。

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