日本毒性学会学術年会
第45回日本毒性学会学術年会
セッションID: S6-3
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シンポジウム6
ナノマテリアルの吸入ばく露による発がん性研究
*菅野 純
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抄録

 ナノマテリアル(NM)は、その粒子の縦・横・高さのどれか一辺が100ナノメートル以下と定義される多種多様な粒子の総称であり、それらの新しい物理化学的特性が、新たな毒性の危惧を生んでいる。

 従来、粒子状物質毒性学という分野があり、その一つにアスベストに代表される繊維発癌(肺癌や中皮腫)がある。カーボンナノチューブの中には、これに該当する大きさと形状の粒子を含むものがある事から、まず、その癌原性が確認された。

 概して、難分解性・不溶性の粒子状物質の「急性毒性」は弱く、その「慢性毒性」が問題となる事が多い。NMの場合、個々の粒子(一次粒子)はナノサイズでも、凝集体(二次粒子)はマイクロメートルに及ぶ場合があり、吸入の際の毒性は、粒子の大きさや形によって呼吸器系内での到達部位が異なる点や、異物除去や炎症等の組織反応の主役であるマクロファージの反応様式が異なる点など、それほど単純ではない。Frustrated phagocytosis、肉芽腫・瘢痕形成、凝集体の修飾等が論議される。また、細胞外基質への沈着と間葉系細胞との相互作用も考慮される。

 ここでは、厚生労働科学研究費等で実施された中皮腫及び肺腫瘍に関する研究成果、及び、日本バイオアッセイ研究センターにおいて実施される2年間の全身曝露吸入がん原性試験の成果から、肺の異物除去機構、過負荷、用量相関性の関係を考察する。(厚生労働科学研究費補助金等による)

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