日本毒性学会学術年会
第45回日本毒性学会学術年会
セッションID: W4-1
会議情報

ワークショップ4
細胞加工製品における非臨床試験
*佐藤 陽治
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録

再生・細胞医療に用いられる細胞加工製品の非臨床開発段階では、品質・安全性確保のための様々な試験が必要とされる。ただし、複雑で動的な生細胞を含むという、ユニークな特性をもつことから、既存の試験法がそのまま適用できるとは限らない。例えば、生細胞を含むことから原料等や最終製品のウイルス安全性試験には、高い迅速性が求められる。また、多くの低分子化合物の非臨床安全性試験では、ヒトへの外挿性を担保するための安全係数を考慮した大量の検体を動物に投与し、陰性の結果に基づきヒトでの安全性を推定するが、細胞加工製品で同様の試験を実施する際には、動物や投与部位のサイズの制限、および細胞のサイズが低分子化合物よりも大きいことにより、検体投与量は通常、ヒトでの臨床投与量以下となる。この場合、形式は似ていてもプリンシプルが異なる試験となる。つまり陰性の結果によって、製品の品質としてハザードが一定量未満であることを示すことができても、ヒトでの安全性の推定は上のような低分子化合物の場合よりも難しい。なお、細胞加工製品中に含まれる細胞の造腫瘍性や体内動態といった、従来の医薬品等にはない品質・安全性上の懸念については、改めて評価法を開発しなければならない。例えば、悪性形質転換細胞の混入(発生)は造腫瘍性を惹起するハザードであり、高感度検出法が必要とされる。また、ES細胞やiPS細胞は元来の性質として造腫瘍性を持つため、特にES/iPS細胞加工製品については、最終製品中の不純物としての未分化ES/iPS細胞の混入(残存)を高感度で検出する必要がある。わが国では、こうした不純物としての造腫瘍性細胞を高感度で検出する試験法が世界に先駆けて数多く開発されており、厚生労働省は昨年、これら造腫瘍性関連試験法のガイドライン案を公表している。また、これらの試験法に関する多施設バリデーションのプロジェクトが進行中である。

著者関連情報
© 2018 日本毒性学会
前の記事 次の記事
feedback
Top