日本毒性学会学術年会
第45回日本毒性学会学術年会
セッションID: W9-3
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ワークショップ9
LA-ICP-MSの毒性病理学における有用性 ー 病理研究者からみたIMS ー
*古川 賢
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抄録

LA-ICP-MS(レーザーアブレーションICP質量分析法)はレーザーにより試料を微粒子化しながら超高感度なICP-MSで連続的に分析し、半定量性のあるイメージング手法である。分析対象は元素と限定されるが、病理組織標本にも応用可能とされており、分析精度は空間分解能がμmレベル、検出限界が10 ppb~0.1%である。本発表ではカドミウム(Cd)及びジブチルスズ(DBTC1)誘発性のラット胚子/胎盤病変とLA-ICP-MSによるこれら元素の局在性との関係について検討した。

(1) Cdの胎盤への影響:妊娠Wistar Hanラット(妊娠18日)にCd 0.04 mmol/kgを腹腔内投与し、経時的に剖検し、胎盤を検索した。形態学的には投与1時間後より迷路層に病変が観察された。Cdにより誘導されるメタロチオネインの免疫染色では投与24時間後に陽性を示した。一方、LA-ICP-MSでは投与1時間後より迷路層に限局してその局在性が確認された。

(2) DBTClの胎盤及び胚子への影響:妊娠Wistar HanラットにDBTC1 20 mg/kgを妊娠7-9日あるいは10-12日に強制経口投与し、経時的に剖検し、胚子及び胎盤を検索した。妊娠7-9日投与群のみに奇形(無頭有口他)が発現し、形態学的には妊娠9.5日の卵黄嚢/絨毛膜胎盤及び胚子では胚子のみにアポトーシスが認められた。一方、LA-ICP-MSではスズの局在性は卵黄嚢、外胎盤錐及び胚子において確認したことから、DBTC1は卵黄嚢胎盤を介して胚子に吸収され、胚子に対して特異的にアポトーシスを誘発することで、奇形が発現したものと推察した。

以上より、LA-ICP-MSでは前処理することなしにパラフィン包埋スライド標本を供試できることから、病理組織学的に元素の局在性を確認することのできる極めて簡易かつ有効な手法であると考えられた。

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