【背景・目的】小麦タンパク質加水分解物を含む洗顔石鹸による重篤な小麦アレルギーの発症事例が多数報告され、腸管感作により発症すると考えられてきた食物アレルギーについて、経皮感作の重要性が明らかになりつつある。当所では即時型アレルギー誘発経皮感作性試験法を開発し、タンパク質加水分解物を含む様々な化学物質による経皮感作について、解析を進めている。本研究では、既存の試験法に改良を加え、経皮感作及び経口惹起によるマウス食物アレルギーモデルの開発を試みた。
【材料と方法】BALB/cマウス(8週齢雌)の背部を剃毛し、パッチテスターを用いて溶媒に500 µg オボアルブミン(OVA)を加えた懸濁液をマウス皮膚に貼付した(3日間連続貼付/週×4週)。その1週後、50 mg OVAを4回/1週 (OVA-pc-4群)又は7回/2週(OVA-pc-7群)強制経口投与し、血中のOVA特異的抗体価を測定した。その1週間後、100 mg OVA強制経口投与によるアナフィラキシー反応惹起、下痢スコア測定ならびに、皮膚、脾臓、リンパ節及び消化管の病理組織学的解析を行った。又、対照群として、皮膚感作の代わりに120 µg OVAを2回/2週腹腔内投与する群 (OVA-ip群)及び溶媒を貼付する群 (PBS-pc群)を設けた。
【結果及び考察】OVA-pc-4群及びOVA-pc-7群では感作後のIgG1及びIgE抗体価上昇が、OVA-ip群ではIgG1抗体価上昇が認められた。OVA-ip群及びOVA-pc-7群ではOVAの強制経口投与による惹起30分後の直腸温度に低下傾向が見られ、下痢スコアがPBS-pc群に比べ有意に上昇した。これらの結果から、本モデルは経皮感作及び経口惹起による食物アレルゲンの探索に有用なモデルとなりうると考えられた。アジュバント作用を効果的に探索するためには、感作及び惹起時のOVA濃度並び強制経口回数などについて、更なる最適化の検討が必要と考えられた。病理組織学的解析結果を加えて報告する予定である。