日本毒性学会学術年会
第46回日本毒性学会学術年会
セッションID: P-14S
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ポスターセッション
血管内皮細胞選択的な増殖促進機構解析ツールとしてのフェナントロリン亜鉛錯体
*信清 拓海森 光弘藤江 智也原 崇人鍜冶 利幸山本 千夏
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抄録

【背景】内皮細胞は血液と直接接している唯一のcell typeであり,血液の凝固・線溶活性など多岐にわたって血管機能を調節している。血管平滑筋細胞は,その増殖・遊走活性の亢進が血管病変進展の主要因とされている。血管病変の進展には,それぞれの細胞の増殖が大きく影響しているが,そのメカニズムは未解明な点が多く存在する。最近,内皮細胞増殖を促進する亜鉛錯体zinc(Ⅱ)(2,9-dimethyl-1,10-phenanthroline)(Zn-DMP)を見出した。本研究では,Zn-DMPの内皮細胞増殖に対するcell type選択性および構造活性相関を解析した。【方法】ウシ大動脈内皮細胞および血管平滑筋細胞を10,000 cells/cm2で播種し24時間培養して(sparse culture),Zn-DMPおよび金属置換体で24時間処理した。処理終了3時間前に[3H]thymidineで標識し,酸不溶性画分への放射活性によって増殖活性を評価した。【結果および考察】Zn-DMP処理によって,sparse cultureの内皮細胞の増殖促進が認められた。無機亜鉛による増殖促進作用はZn-DMPに比べ弱かったが,配位子DMPでは消失していた。Zn-DMPのFe置換体Fe-DMPの処理では,同様の増殖促進作用が認められたが,Co, Ni, Mn, HgおよびPb置換体では消失した。CuおよびCd置換体では細胞傷害が認められた。一方,血管平滑筋細胞ではZn-DMPの増殖促進作用は認められなかった。無機亜鉛,配位子DMPおよびZn-DMPの金属置換体においても血管平滑筋細胞の増殖促進活性は認められなかった。以上より,Zn-DMPは内皮細胞選択的に増殖を促進する亜鉛錯体であり,その増殖活性には亜鉛と配位子DMPが錯体を形成することおよび中心金属として亜鉛あるいは鉄を要求することが示唆される。

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© 2019 日本毒性学会
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