日本毒性学会学術年会
第46回日本毒性学会学術年会
セッションID: P-218
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ポスターセッション
微小管機能阻害薬による血管外漏出誘発と皮膚傷害メカニズム
*髙石 雅樹田村 雄志山室 愛子花田 彩香佐川 匠武田 利明浅野 哲
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抄録

【目的】微小管機能阻害薬のパクリタキセル(PTX), ドセタキセル(DOC)及びビノレルビン(VNR)は起壊死性抗がん剤に分類され、投与ミス等により薬剤が血管外漏出すると、重篤な皮膚傷害を引き起こすことが知られている。一方で、明確な投与ミスが無い場合でも、投与部位周辺に炎症が認められることがある。我々はこれまでに微小管機能阻害薬が強い細胞傷害性を示し、この傷害性にはこれら医薬品に含まれる主薬と共に添加剤も関与することを見出し、本学会にて報告している。そこで、PTX, DOC及びVNRの血管外漏出誘発及び皮膚傷害メカニズムを、ヒト由来培養細胞株を用いて検討した。

【方法】①ヒト血管内皮細胞(HUV-EC-C細胞)にPTX, DOC及びVNRの臨床用薬液とその希釈溶液を2時間曝露し、細胞生存率を測定した。②正常ヒト皮膚線維芽細胞(SF-TY細胞)にPTX, DOC及びVNRの臨床用薬液の希釈溶液を24時間曝露し、培養上清を回収してELISA法にてIL-6濃度を定量した。③SF-TY細胞にPTX, DOC及びVNRの臨床用薬液の希釈溶液を24, 48時間曝露し、培養上清を回収してELISA法にてIL-8濃度を定量した。

【結果及び考察】①いずれの微小管機能阻害薬の曝露においても、有意に細胞生存率が低下した。②いずれの微小管機能阻害薬の曝露においても、IL-6濃度が有意に上昇した。そしてこのIL-6濃度の上昇は、VNRおいて顕著であった。③VNRを48時間曝露した細胞のみIL-8が検出された。

 従って、微小管機能阻害薬の血管外漏出による皮膚傷害において、IL-6が炎症進行の上で重要なメディエーターとなる可能性が示唆された。また、微小管機能阻害薬は血管内皮細胞に対して傷害性を示すことが明らかとなり、血管内に投与された微小管機能阻害薬が血管内皮を傷害することにより、微小管機能阻害薬の血管外漏出を誘発して皮膚傷害を引き起こすことが示唆された。

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