日本毒性学会学術年会
第46回日本毒性学会学術年会
セッションID: P-224
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ポスターセッション
パラコートによるGDF15の発現上昇の機序とその役割
*角 大悟長居 実香姫野 誠一郎
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抄録

【目的】ビピリジニウム系除草剤のパラコート(PQ)は活性酸素種を生体内で産生することで強力な毒性を示す。PQを使用している農業従事者においてパーキンソン病発症率が高いことが疫学研究より知られている。一方、当研究室ではDNAマイクロアレイの結果から、ヒト神経芽細胞腫SH-SY5Y細胞のPQへの曝露により、growth differentiation factor 15 (GDF15) mRNA量が顕著に増加していることを明らかにした。近年、パーキンソン病患者の血清中および脳脊髄液中のGDF15量が病態の進行状況と関連性が高いことが報告されている。本研究では、PQによるGDF15の発現量上昇の機序とその役割について明らかにすることを目的とした。

【方法】細胞:SH-SY5Y細胞を使用した。 mRNA量:各濃度のPQに曝露したSH-SY5Y細胞からtotal RNAを回収し、Realtime-PCR法で測定した。タンパク質量:Western blot法で検出した。遺伝子導入:Lipofection法で導入した。細胞毒性:alamarBlue試薬を用い測定した。

【結果および考察】GDF15発現量に対するPQの影響について検討するためにSH-SY5Y細胞をPQに曝露し、GDF15のmRNA、タンパク質量を測定した。その結果、GDF15 mRNA、タンパク質量がPQにより増加していることが明らかとなった。近年、GDF15が細胞死に対し、防御的な機能を有すことが報告されている。そこで、PQによるGDF15発現上昇がSH-SY5Y細胞の細胞死に対して抑制作用を示すのではないかと考えた。siRNAを使用したところ、control siRNAと比較してGDF15 siRNAを導入した細胞ではPQに対する感受性が高くなっていた。さらに、GDF15 siRNAで処理した細胞の培地にリコンビナントGDF15を添加してもPQに対する感受性に変化はなかった。これらの結果からGDF15はPQの細胞毒性に対して、細胞内で防御的に働いていることが示唆された。今後、PQによるパーキンソン病発症機序におけるGDF15の役割について検討していきたい。

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