日本毒性学会学術年会
第46回日本毒性学会学術年会
セッションID: P-226
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ポスターセッション
ラット肝由来株化細胞において四塩化炭素は小胞体-Golgi間小胞輸送を阻害する
*中川 博史小森 雅之西村 和彦
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抄録

【目的】四塩化炭素による肝障害は、代謝物であるラジカルが細胞の膜脂質に障害を起こし、膜構造を不安定化することにより起こるとされている。肝細胞の特徴的変化として細胞内での脂肪滴滞留が見られるが、これは細胞内での脂質の輸送が破綻していることを示す。細胞において小胞体内で生成された脂質は脂質結合タンパクとの複合体の形をとり、小胞体(ER)からGolgi装置さらに細胞膜を経て分泌される。これらは全てタンパク小胞輸送経路を利用して行われるため、四塩化炭素の毒性を分子的に明らかにする上で、細胞内タンパク小胞輸送への影響を評価する必要がある。本研究ではERからGolgi装置へのタンパク小胞輸送経路であるCOPII小胞輸送への四塩化炭素の影響を調べた。【方法】ラット肝由来株化細胞であるRLC-16細胞、対照としてラット腎由来株化細胞のNRK細胞を用いた。四塩化炭素は0.3, 1.0, 3.0 mMで24時間処置した。COPII小胞輸送の評価には、Brefeldin A処置により断片化しERと癒合したGolgi装置が、COPII小胞輸送依存に再構築される際の回復程度を指標とした。Golgi装置は抗Golgi58K抗体による免疫染色により観察した。ERストレスの評価にはGRP78タンパクウエスタンブロットを用いた。アポトーシス発現はHoechst33342染色により評価した。【結果と考察】使用した濃度の四塩化炭素はNRK細胞の生存率に影響しなかったが、RLC-16細胞では3.0 mMで生存率を低下させた。四塩化炭素はRLC-16細胞においてGolgi装置の再構築を抑制していた。一方でNRK細胞ではすべての濃度の四塩化炭素はGolgi装置の再構築に影響を与えなかった。COPII小胞輸送の抑制はERストレスを惹起する。NRK細胞において見られなかったストレスマーカータンパクGRP78の発現誘導がRLC-16細胞で認められた。加えてRLC-16細胞ではアポトーシス発現細胞の増加が認められた。肝細胞において、四塩化炭素から産生されたラジカルが細胞内膜系に作用した結果、ER-Golgi間タンパク小胞輸送を抑制し、ERストレスを起こしアポトーシス発現を誘導すると考えられた。

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