日本毒性学会学術年会
第46回日本毒性学会学術年会
セッションID: P-41S
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ポスターセッション
ポリ塩化ビフェニル(PCBs)曝露がイヌ脳中甲状腺ホルモン恒常性へ及ぼす影響- 脳中甲状腺ホルモンの分析法開発 -
*小野 純華髙口 倖暉田上 瑠美国末 達也岩田 久人田辺 信介野見山 桂
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抄録

 甲状腺ホルモン(THs)は甲状腺で合成・分泌され、神経の成長など多様な役割を担っている。近年、ポリ塩化ビフェニル(PCBs)などの環境汚染物質によるペット動物の甲状腺機能撹乱が疑われている。さらに、PCBsの水酸化代謝物であるOH-PCBsはTHs様構造を持ち、脳移行に伴う脳神経発達への悪影響が危惧されている。また、視床下部や脳下垂体はTHsの合成と分泌を調整する重要な器官でもあるため、脳を対象としたTHsの分析はリスク評価の観点において重要である。しかしながら、これまでに脳中THsの分析法はいくつか報告されているが、絶対回収率が低いことや夾雑物質の不十分な除去が指摘されている。そこで本研究では、LC-MS/MSを用いて高感度で高精度な脳中THs分析法の開発を試みた。

 超音波抽出法、EVOLUTE CXを用いた前処理法の検討により絶対回収率:46.6-52.5 %、マトリックス効果:58.7-82.3 %を達成した。日内・日間変動は15 %以下、検出下限値、定量下限値はそれぞれ0.01-0.12 ng/g、0.04-0.3 ng/gを達成し、高精度かつ高感度な分析法の開発に成功した。さらに、PCBsを曝露したイヌ脳試料を分析に供試し、PCBsとOH-PCBsが脳中THsへ及ぼす影響について検証した結果、THs濃度に有意差は認められなかったが、3,5,3’-Triiodthyronine(T3)は減少傾向、3,3’,5-Triiodothyronine(rT3)は上昇傾向を示した。そこで、rT3/T3の濃度比を算出したところ、有意差が認められたことから、PCBs曝露により脳内で脱ヨウ素化酵素が撹乱され不活性方向に代謝が進行したとものと考えられた。しかし、本結果は脳組織を均一化した試料による分析であるため、今後は脳部位別分析や他臓器との関係を検証することが必要である。

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© 2019 日本毒性学会
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