【背景及び目的】
網膜色素変性症(RP)は最終的に失明を来す代表的な眼科疾患で、病態の理解と治療法の確立が必要である。RPにおける視細胞のアポトーシスは酸化ストレスに起因すると報告されている。我々は抗酸化物質のビタミンCを主成分とするアセロラ(アセロラパウダーVC30)を用いて、N-メチル-N-ニトロソ尿素(MNU)誘発ラット網膜変性症の病態抑制効果を検証した。
【方法】
①7週齢雌SDラットに50mg/kg MNUを単回腹腔内投与した。蒸留水、4%、8%アセロラ水(2ml/匹)をMNU投与の3日前から解剖日まで1日1回強制経口投与した。MNU投与後7日に眼球の病理評価を実施し、網膜視細胞比率及び網膜障害率を算出した。②アセロラ水の抗酸化力を検証するためにOXY吸着テストを用いて1%、2%、4%、8%アセロラ水の抗酸化力を測定した。
【結果】
①MNU単独群では視細胞の減少が顕著であったのに対し、8%アセロラ水併用群では視細胞の残存が認められた。さらに、8%アセロラ水併用群では辺縁部網膜視細胞比率の有意な減少抑制、及び網膜外層の広範囲にわたる残存が認められた。②OXY吸着テストの結果から、アセロラ水の用量依存的な抗酸化力の増加が認められた。
【考察】
アセロラ水はMNU誘発網膜変性を軽減した。MNU誘発網膜変性における視細胞障害は酸化ストレスによるアポトーシスが起因することが報告されている。現在、酸化ストレス発現に着目してアセロラ水による病態抑制の経時的変化を検討中である。