今世紀初めにヒト全ゲノム解読されて以来、2013年には人間の脳内神経回路すべてをマッピングする超大型プロジェクトが、2016年には人体の約37兆個の全細胞の全遺伝子発現を解読しようとする大規模国際プロジェクト「Human Cell Atlas」が、欧米を中心にスタートした。日本でも今年、「全身レベルで全情報を」という方針が国から打ち出された(http://www.jst.go.jp/report/2018/180829.html)。我々の研究グループは、生体内の分子―細胞―臓器―臓器間―個体といった多階層を横断するレベルでの生体機能メカニズム、そして、この世の中にある全ての疾患間の関係性を遺伝子レベルから病態レベルで定量的に表す新しい概念であるHuman Disease Network(Diseasome)をReal-World-Data(RWD)と統合することで、ヒトの生体機能から病態までを統合的にかつ定量的にAIを駆使することで計算機上に再構成したVirtual Human の開発(Virtual Human InformatiX計画)を行っている。本講演では、このVirtual Human InformatiX計画のひとつとして、マウスの全身網羅的トランスクリプトームデータ(一部 iScience, 2, 238-268, 2018に公表)にAIを駆使してヒトの治験データを含むRWDを機械学習させることで、マウスのデータを「ヒト化」させることに成功した。そして、このHumanized Mouse-Database (hMDB)を用いて、高精度かつ効果的に各種医薬品や機能性食品・飲料素材のAE, PK, INDなどを予測でき、且つ既存の医薬品や機能性食品・飲料素材のDRにも活用できるプラットフォームを構築することに成功したので、本講演でそれらの実例を紹介する。