日本毒性学会学術年会
第46回日本毒性学会学術年会
セッションID: S25-3
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シンポジウム 25
-腎毒性-
*甲斐 清徳
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抄録

医薬品の非臨床安全性試験における腎毒性において、低分子化合物による急性腎障害(Acute kidney injury: AKI)の多くは尿細管上皮傷害によることが多く、動物毎の尿細管の組織学及び生理学的な特性によって毒性発現の様式が異なる場合があるものの、毒性の動物種差は比較的小さくヒトでの副作用のリスクアセスメントで困難となる場合は少ない。しかし、AKIによる低酸素状態、炎症性サイトカインなどの病巣局所への影響及びネフロン全体の機能低下によって、AKIが増悪し慢性腎疾患(Chronic kidney disease: CKD)に進行すると、腎間質の間葉系細胞の病理反応、炎症反応によって動物種毎に特殊な反応を生じる。国内の薬剤性腎障害は、AKI以外の慢性間質性腎疾患、糸球体疾患、硬化性変化などが約6割を占める。また、抗体、核酸、合成ペプチドなどの生物製剤では、動物種特異的な糸球体傷害を生じることが多く、ヒトの安全性評価が難しく、抗薬物抗体の産生はさらに安全性評価を困難にさせる。近年、取上げられている腎毒性バイオマーカーの多くはAKIのマーカーであり、糸球体傷害及びCKDを適切にモニターできるバイオマーカーの充実も必要である。本シンポジウムでは、このような医薬品の腎毒性評価の現状と課題を概括するとともに、新たなin vitro評価系として注目されているオルガノイド培養、organ-on-chipなどの安全性評価の組み込みも交え、今後の腎毒性評価のあり方について講究したい。

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© 2019 日本毒性学会
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