日本毒性学会学術年会
第46回日本毒性学会学術年会
セッションID: S7-2
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シンポジウム 7
ネオニコチノイド系殺虫剤の曝露実態の解明と毒性評価
*池中 良徳一瀬 貴大Collins NIMAKO中山 翔太平野 哲史市川 剛加藤 恵介高橋 圭介長谷川 浩平 久美子有薗 幸司星 信彦藤岡 一俊石塚 真由美
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抄録

 ネオニコチノイド(NNs)は、現在世界で最も使用されている殺虫剤の一つである。特に日本では、果物や野菜における残留基準値が諸外国と比べ高く設定され、かつ複数種が使用されるため、全体的にNNsの摂取量が多いと考えられる。

 そこで本研究では、日本人におけるNNs曝露実態を明らかにする事を目的に、新生児、幼児を含む延べ数百人から尿を採取し、尿中に含まれる7種のNNs(アセタミプリド、イミダクロプリド、チアメトキサム、チアクロプリド、ニテンピラム、クロチアニジン、ジノテフラン)及び代謝物(N-デスメチルアセタミプリド)をLC/MS/MSで定量した。更に、得られた尿中データより、推定摂取量を算出し、一日摂取許容量(ADI)と比較した。

 分析の結果、日本人の尿から何らかのNNsが検出され、特に、N-デスメチルアセタミプリド(90%)、クロチアニジン(50%)、ジノテフラン(50%)の検出頻度が高かった。一方、尿中濃度から推定した各NNs摂取量は、10~50 µg/dayであり、ADIに比べアセタミプリドで最大1%程度、他のNNsは1%未満であった。更に本研究では、生後48時間以内の新生児の尿も分析した。その尿中濃度は‹LOD~0.7 ng/mLと極めて低かったが、分析した57サンプルのうち14サンプルから検出された。

 本研究の結果、多くの日本人は胎児を含めNNsの曝露を受けていることが明らかにされた。NNsの慢性低濃度曝露の健康影響については、胎児移行のメカニズムや神経発達を含む毒性に不明な点が多いが、最近の報告においてNNsは現在のNOAELの1/10程度の曝露でも実験動物に対し不安などの情動認知行動に影響を与える事が示されている。

 NNsの毒性について、再度リスク評価を実施した上で、継続的なモニタリングを行う必要がある。

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© 2019 日本毒性学会
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