日本毒性学会学術年会
第46回日本毒性学会学術年会
セッションID: S9-2
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シンポジウム 9
Hand1-Luc ESTを用いる発生毒性学的エンドポイント
*鈴木 紀之
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抄録

マウスES細胞を利用したEST(Embryonic Stem Cell Test)は、被験物質の影響をES細胞の心筋分化過程における拍動阻害により評価することを特徴とする、培養細胞のみを用いたin vitro 発生毒性試験として知られている(Spielmann et al., 1997)。我々は、簡便かつ短期間で化学物質の発生毒性を予測する新規ESTの開発を目的に研究を開始し、まずES細胞から心筋への分化過程において、発生毒性物質との関連が示唆される複数のマーカー遺伝子を同定した。また、マーカー遺伝子の中から、心臓の形態形成など分化に重要な機能を有するHand1(heart and neural crest derivatives expressed 1)遺伝子に着目し、心筋分化過程におけるHand1遺伝子の発現量をルシフェラーゼ活性で簡便にモニター可能な組換えマウスES細胞を用いたHand1-ESTを開発した(Suzuki et al., 2011)。

さらに、我々は、予測精度向上を目的にさらなる改良を加え、医薬品や化学品等の複数化合物のデータを用いて検証を行い、新しい予測モデル式を含むHand1-Luc ESTを開発した(Le Coz et al., 2014)。Hand1-Luc ESTは96ウェルプレート中で分化誘導し、被験物質の影響をルシフェラーゼの測定で評価するスクリーニングに適した簡便な方法である。本発表では複数化合物の検証結果とともに、Hand1-Luc ESTの予測能やOECDテストガイドライン化を目的とした国際バリデーション試験結果および最近の活動状況についても報告したい。

本研究の一部は、NEDO、経済産業省、日本化学工業協会が推進する日本化学協会LRI(Long-range Research Initiative)により支援されました。

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