日本毒性学会学術年会
第46回日本毒性学会学術年会
セッションID: W8-2
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ワークショップ 8
重金属の毒性に対する血管内皮細胞の防御システム
*新開 泰弘熊谷 嘉人
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抄録

 カドミウムやメチル水銀などの重金属は親電子性を有し、タンパク質のシステイン残基を化学修飾することによってその機能障害を引き起こし、それが毒性発現の一因であると考えられている。一方、低濃度の曝露条件下において、生体はそのような有害重金属に対して、親電子シグナル伝達経路の活性化を介して生体防御系の遺伝子発現を亢進させる応答システムを有していることが分かってきた。例えば、メチル水銀やカドミウムはセンサータンパク質であるKeap1のシステイン残基を修飾し、その応答分子である転写因子Nrf2が活性化されることで下流の解毒酵素群が誘導され、メチル水銀やカドミウムの毒性防御に働く。同様に、カドミウムはHSP90/HSF1経路を活性化することによって重金属の毒性防御に働くシャペロンタンパク質群が誘導されることを我々は報告してきた。また、このようなシグナル伝達経路だけでなく、細胞内にはシステインやグルタチオンのような求核低分子が存在し、親電子物質を捕獲・不活性化する防御系が存在する。我々は最近、cystathionine γ-lyase(CSE)、cystathionine β-synthase(CBS)、及びcysteinyl-tRNA synthetase 2 (CARS2)などから産生されるサルフェン硫黄(S原子に付加した0価のS原子)が通常のチオール基と比較して高い求核性を示し、メチル水銀やカドミウムの解毒・不活性化に関わっていることを見出した。細胞内にはサルフェン硫黄が結合しているタンパク質が広範に存在することから、そのようなタンパク質の機能性にも着目して現在研究を進めている。本ワークショップでは、主に血管内皮細胞における重金属毒性に対する防御応答系について紹介し、更に重金属の捕獲・不活性化におけるサルフェン硫黄の意義についても考察したい。

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