日本毒性学会学術年会
第47回日本毒性学会学術年会
セッションID: O-2
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口演
有機水銀リアーゼ(MerB)によるメチル水銀の脱メチル化を介した微量無機水銀産生とオートファジー応答
*高根沢 康一中村 亮介大城 有香浦口 晋平足立 達美清野 正子
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抄録

【目的】メチル水銀は脳神経系をはじめとした様々な臓器に傷害をもたらす。体内に取り込まれたメチル水銀の一部は時間経過とともに脱メチル化され, 無機水銀に変換され体内に残存することが知られている。したがって, メチル水銀による毒性評価にはメチル水銀と無機水銀の細胞影響を評価する必要がある。しかし, 哺乳類細胞におけるメチル水銀の脱メチル化酵素は未だに同定されておらず, 脱メチル化のメカニズムは不明である。さらに, 無機水銀は細胞透過性が低く, 無機水銀を曝露させる実験系では, 微量無機水銀の細胞応答や細胞毒性を評価することが困難である。そこで我々は, 水銀耐性菌由来の有機水銀リアーゼ(脱メチル化酵素)遺伝子であるmerBをHEK293細胞に導入したMerB発現細胞を作製し, 細胞内で微量のメチル水銀から無機水銀を産生させる細胞系を確立した。本研究では, 様々な重金属に対するストレス応答が明らかにされつつあるオートファジーに焦点を当て, メチル水銀と無機水銀による細胞応答の差異についてMerB発現細胞を用いて解析を行った。

【結果・考察】野生型とMerB細胞にメチル水銀を処理し, オートファジー関連遺伝子の発現を比較した。メチル水銀処理によりMerB発現細胞では, Atg9, Atg12, Vsp11, LC3A, LC3Cおよびp62 のmRNA発現誘導レベルとLC3-IIおよびp62のタンパク質発現量が野生型細胞よりも有意に高かった。さらに, MerB細胞におけるLC3-IIの増加がオートファジーの活性化によるものかをオートファジー阻害剤であるクロロキン(CQ)を用いたオートファジーフラックスアッセイにより評価した。メチル水銀とCQを同時に処理するとLC3-IIはCQ単独処理と比較して増加し, MerB細胞におけるメチル水銀処理によるLC3-IIの増加はオートファジーの活性化であることが明らかになった。以上の結果より, 微量無機水銀による強いオートファジーの活性化が示唆された。

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