日本毒性学会学術年会
第47回日本毒性学会学術年会
セッションID: P-10S
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ラットを用いたメチル水銀曝露による多種感覚モダリティ障害の行動学的解析
*山田 裕大篠田 陽吉田 映子鍜冶 利幸藤原 泰之
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抄録

【目的】メチル水銀(MeHg)は水俣病の原因物質であり、主たる症状として様々な感覚障害を含む神経障害を引き起こすことが知られている。しかしながら、MeHg毒性の種々感覚モダリティ(冷覚、温覚、痛覚、圧覚など)への影響の違いついては、全く明らかにされていない。そこで本研究では、MeHgを経口投与し作成した水俣病モデルラットを用いて種々の感覚モダリティについて感覚応答試験を行うことで、それぞれの感覚モダリティ障害の経時変化について調査するとともに、MeHg毒性に対する感受性の違いについて研究を行った。

【方法】9週齢のWistar rat(♂)にMeHgCl水溶液(6.7 mg/kg/day)を5日間投与2日間休薬のサイクルで2週間経口投与を行い、水俣病モデルラットを作成した。Control群にはMeHg投与群と体重あたりの投与量が同量となる水を投与した。投与開始初日から冷覚、温覚、痛覚および圧覚の各感覚モダリティについて感覚応答試験を行い、MeHg曝露による各感覚モダリティへの影響を70日間に渡り経時的に評価した。

【結果・考察】MeHg投与群において、Control群と比較して行動解析期間70日間にわたる有意な体重減少および後肢交叉スコアの上昇が認められた。冷覚および痛覚については2~3週目前後からMeHg投与群において有意な感覚鈍麻が確認された。温覚および圧覚については部分的に有意な差が見受けられた箇所はあったものの、全体を通して顕著な傾向が認められなかった。これらのことから、少なくとも本実験条件下ではMeHg曝露による感覚モダリティ障害の程度には差があり、その感受性は冷覚・痛覚 > 温覚・圧覚の順に高いと言える。今後は本研究で得られた行動学的結果が、末梢および中枢神経の病理学的所見とどのような対応関係にあるかについて明らかにする予定である。

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