日本毒性学会学術年会
第47回日本毒性学会学術年会
セッションID: P-165
会議情報

ポスター
甲状腺ホルモン代謝亢進に起因した胎児甲状腺ホルモン変動
*島田 真理子土井 聡子南 健太山口 尊史須方 督夫
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録

【目的】脳の発達には甲状腺ホルモンが深く関与している。特に、胎児期における脳中の甲状腺ホルモン低下は脳発達異常を引き起こす可能性が懸念されている。げっ歯類では肝臓の薬物代謝酵素を誘導する化学物質曝露により、甲状腺ホルモン代謝が亢進し、結果として血中甲状腺ホルモンの低下が生じることが知られている。このような、肝臓影響に起因した甲状腺ホルモン濃度の低下は、一般的に甲状腺ホルモン合成阻害により生じる甲状腺ホルモン濃度の低下と比較して軽微な変化であるものの、薬物代謝酵素亢進による妊娠期間中の母動物血中甲状腺ホルモン低下と児動物の脳中甲状腺ホルモン低下との量的な関係性については不明な点が多い。そこで肝臓における甲状腺ホルモン代謝亢進に起因した母動物の甲状腺ホルモン低下によって児動物における甲状腺ホルモン変動が認められるかどうか検証するため、3種類の薬物代謝酵素誘導剤(Phenobarbital Sodium、Clofibrate、β-naphthoflavone)を妊娠ラットに強制経口投与し、母動物および児動物の血中甲状腺ホルモンを測定し、比較した。加えて、脳発達との関連性が高いと考えられる児動物の脳中甲状腺ホルモンについても測定した。

【結果および考察】妊娠20日の母動物の血中甲状腺ホルモンは肝酵素誘導剤を投与した全投与群で有意な低下が認められ、その減少の程度には群間で明らかな差は認められなかった。しかし、同時点の胎児の血中甲状腺ホルモンはClofibrate群のみ有意な低下が認められた。さらに同群の胎児脳中甲状腺ホルモンは対照群と比較して有意な差は認められなかった。このことから、妊娠期間中の肝酵素誘導剤曝露による母動物の血中甲状腺ホルモン変動と胎児の血中および脳中甲状腺ホルモン変動は必ずしも相関して変動するわけではなく、母動物の甲状腺ホルモン低下による児動物影響を評価する際には、児動物の血中および脳中甲状腺ホルモン測定が有用である可能性が示唆された。

著者関連情報
© 2020 日本毒性学会
前の記事 次の記事
feedback
Top