日本毒性学会学術年会
第47回日本毒性学会学術年会
セッションID: P-166
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ジンクピリチオンの4週間反復経口投与でみられたラットの骨格筋病変
*西村 悠花里秋澤 文香土岸 広治諸木 孝泰近藤 聡志井上 裕基
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抄録

【背景・目的】

ジンクピリチオン(ZnPT)は亜鉛とピリチオンが配位結合した有機亜鉛錯体である。抗菌・防腐作用を持ちフケや脂漏症に有効なことから市販のシャンプーに配合されているが,環境ホルモンの疑いがあることが報告されて以降は使用が減少している。一方で,その毒性情報は古く,最新の知見は見当たらない。そこで,我々はZnPTのラットにおける4週間反復経口投与毒性試験を行い,ZPTの毒性を評価した。また,配位子の影響を調べるため,配位子対照群としてピリチオンナトリウム(NaPT)群の毒性も同時に評価した。

【材料・方法】

6又は7週齢の雄性Crl:CD(SD)ラット各群5例に,ZnPT(2及び5 mg/kg)及びNaPT(4.7 mg/kg)を1日1回4週間反復経口投与した。対照群にはZnPT群の媒体であるオリーブ油を投与した。投与期間中に一般状態観察,体重測定,摂餌量測定,尿検査及び血漿中亜鉛濃度測定(Day 1及びDay 28:投与1, 4及び24時間後)を実施した。最終投与約24時間後に解剖し,血液学的検査,血液生化学的検査,器官重量測定,肉眼的検査,病理組織学的検査及び電子顕微鏡学的検査を実施した。

【結果・考察】

ZnPT 5 mg/kg群の1例において,Day 24から後肢の運動失調及び歩行障害がみられた。また,ZnPT 5 mg/kg群及びNaPT群において摂餌量の減少を伴わない体重増加抑制がみられ,血液生化学検査及び尿検査では血漿中及び尿中クレアチニンの減少がみられた。血漿中亜鉛濃度は,対照群と比較してZnPT 5 mg/kg群のAUC1-24hで約1.5倍の増加がみられた。解剖時の肉眼的検査では,ZnPT 5 mg/kg群において後肢骨格筋の削痩がみられた。病理組織学的検査では,大腿部骨格筋において極軽度の変性及び壊死を伴う筋線維の萎縮がみられ,同様の病変がNaPT群にもみられた。また,ZnPT 5 mg/kg群において,大腿部骨格筋内に存在する末梢神経線維の消失及び脱髄がみられた。以上のことから,ZnPT投与により後肢の末梢神経及び骨格筋に変化がみられ,これらの変化は配位子によるものと考えられた。

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