日本毒性学会学術年会
第47回日本毒性学会学術年会
セッションID: P-177
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カニクイザルにおけるヨウ素125標識ヒト化免疫グロブリンG2Δaの胎盤通過性
*Yuji ISOBENatasha R. CATLINDenise M. O'HARAMengmeng WANGMinlei ZHANGChristopher J. BOWMAN
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抄録

【目的】抗体医薬はFcRn受容体等を介した輸送経路により胎盤を通過し,母体から胎児に移行することが知られている。一方,いずれの動物種においても器官形成期における抗体医薬の胎盤通過性に関する報告は少ない。抗体医薬の胎盤通過性を理解することは,ヒトを含めた各動物種における発生毒性のリスク評価に有用である。

【方法】これまでに報告されている,ヒト化IgGΔ2 (hIgG2) を投与したラットにおける胎盤通過性の知見に補足するため,カニクイザルを用いて母動物の妊娠35,40,50,70および140日に125I標識hIgG2を静脈内投与し,胚・胎児への移行時期および生体内分布をγ線測定および投与後24時間後の全身オートラジオグラフィにより定量した。また,各測定時点で胎盤の絨毛組織を採取し,抗FcRn抗体を用いてFcRnタンパクの発現についてウェスタンブロット解析を行った。なお,胚の大きさのため妊娠35日には胚からの血液試料の採取はできなかったが,妊娠40日以降は採取可能であり,胚・胎児の血漿中の125I-hIgG2を測定した。

【結果】胚・胎児血漿中の125I-hIgG2濃度は妊娠期間を通して増加し,母体血漿中の125I-hIgG2に対する濃度比は妊娠40日に比べて妊娠140日では約2.3倍高かった。一方,胚・胎児組織中では妊娠70日まではわずかに増加したものの,妊娠70日から140日では同程度であった。また,胎盤でのFcRnタンパクの発現がすべての測定時点で確認された。

【考察・結論】非ヒト霊長類でラットと同程度のhIgG2の胎盤通過性が示された。このことから,hIgG2の胎盤通過性を検討するためにラットは適切な動物種であると考えられた。また,器官形成期を含む胚・胎児の発生期間中に,非ヒト霊長類およびラットの胚・胎児への抗体の移行が確認されたことから,抗体医薬の胚・胎児に対する直接的な曝露(生物学的標的への抗原結合)により,毒性の発現が誘導される可能性が示唆された。

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