日本毒性学会学術年会
第47回日本毒性学会学術年会
セッションID: P-181
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化学物質の生殖発生毒性の新しいデータベースの開発とその特徴解析
*三浦 稔栗本 雅之川村 智子牛田 和夫井上 薫山田 隆志桒形 麻樹子広瀬 明彦
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抄録

生殖発生毒性は化学物質の有害性評価における重要なエンドポイントの一つである。未評価の化学物質に対して関連情報を統合化して評価するためには、AOPに基づくIntegrated Approaches to Testing and Assessment (IATA)の開発が求められるが、信頼性の高い毒性試験データや機序に関する情報が限られていることから難易度の高い分野である。本研究では、厚生労働省及び経済産業省が実施した反復投与毒性/生殖発生毒性併合試験(OECD TG 422)および簡易生殖発生毒性試験(OECD TG 421)の結果をデータベース(DB)化し、収集データの特徴を解析した。上記事業において、これまでにTG 422およびTG421の試験はそれぞれ295物質及び99物質について実施されており、生殖発生毒性影響が見られたのはそれぞれ113物質及び45物質であった。次いで、発現した毒性の最も重要と考えられる時期を、初期胚発生までの期間、器官形成期、および周産期(哺育4日まで)の3段階に分け集計した。初期胚発生までの時期に影響を及ぼしたのは52物質、全体の33%であり、このうち雄親の精巣毒性に起因したのが10物質であった。器官形成期及び周産期に影響したのはそれぞれ25物質(16%)及び81物質(51%)であった。本DBには、主に初期発生までの期間に生殖器に影響を及ぼす物質、主に周産期に影響を及ぼす物質に対する構造アラートが含まれていたが、生殖発生毒性を包括的にカテゴリー評価するためには、化学構造の類似性だけでなく生物学的な類似性も考慮する必要があり、発現した毒性の時期に対応したAOPを開発することが求められる。また、本DBはNTP等の既存のDBと比較して物質の重複が比較的少ないことから、新しい生殖発生毒性の知見が補強されると考えられる。

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