日本毒性学会学術年会
第47回日本毒性学会学術年会
セッションID: P-186
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4-クロロ-オルトトルイジンのDNA損傷性および損傷誘導メカニズムに関する検討
*柏木 裕呂樹豊岡 達士王 瑞生甲田 茂樹
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抄録

オルトトルイジン (OT)は、IARC発がん性分類において、ヒト膀胱に対して発がん性が認められている (IARC G1)。一方、OTのパラ位にクロロ基が付加した4-クロロ-オルトトルイジン (4-Cl-OT)は、疫学データが不十分であるため、ヒト膀胱に対して発がん性の疑いがある化合物 (IARC G2A)としての分類にとどまっている。発がんの初期ステップとしてDNA損傷生成は重要である。これまでに我々はヒト膀胱細胞モデルT24において、リン酸化ヒストンH2AX (γH2AX)を指標にOTと4-Cl-OTのDNA損傷性を比較検討し、4-Cl-OTのDNA損傷性がOTよりも明らかに強いことを見出した。本知見は、4-Cl-OTのIARC発がん性分類におけるメカニズムアップグレードを検討する際の初歩的知見になりうる。そこで本研究では、4-Cl-OTの詳細なDNA損傷誘導機構を検討することにした。化学物質のDNA損傷誘導には、親化学物質又はその代謝物がDNAに付加してDNAを損傷する直接作用と、代謝過程で生じる活性酸素種 (ROS)がDNAを損傷する間接作用の2つに大別される。まず間接作用に着目しT24細胞に4-Cl-OTを作用したところ、明らかな細胞内ROSレベルの上昇が観察された。この上昇は、抗酸化剤NAC存在下で予想通りほぼ完全に抑制されたが、γH2AX 誘導は、NAC存在下であっても、相応な減少が観察されなかった。これらの結果から、4-Cl-OTによるγH2AX誘導は、ROSが主原因ではないと考えられた。現在、DNA付加体形成によるDNA損傷誘導に着目して、γH2AX誘導機構のより詳細な検討を進めている。

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© 2020 日本毒性学会
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