日本毒性学会学術年会
第47回日本毒性学会学術年会
セッションID: P-1E
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分子標的薬ゲフィチニブによる新規がん細胞浸潤抑制機構
*関口 雄斗平田 祐介野口 拓也松沢 厚
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抄録

ゲフィチニブは上皮成長因子受容体(EGFR)のチロシンキナーゼ活性を選択的に阻害することで抗腫瘍作用を示す分子標的薬であるが、最近の報告ではその標的がEGFRだけではない可能性が指摘されている。即ち、ゲフィチニブの抗腫瘍作用や副作用にはEGFR以外の因子が寄与していると考えられる。実際に我々は、細胞の遊走能を評価するアッセイを用いた解析から、ゲフィチニブの抗腫瘍作用の1つである細胞遊走抑制作用がEGFR非依存的であることを新たに見出した。そこで本研究では、ゲフィチニブの細胞遊走抑制作用を担う新たな標的因子およびその機構の解明を目的として研究を行った。

非小細胞肺がん細胞株A549に、細胞障害を引き起こさない低濃度のゲフィチニブを処置すると、多機能分子p62(SQSTM1)およびp62と類似した構造と機能を持つ分子neighbor of BRCA1(NBR1)のタンパク質レベルが著明に増加し、多様なタンパク質を構成因子とする細胞内構造体aggresome-like bodies(ALB)を形成することを新たに見出した。そこで、CRISPR/Cas9法を用いてp62とNBR1を単独または二重欠損させたA549細胞を樹立し、ゲフィチニブによる抗腫瘍作用に対する影響を解析した。その結果、p62とNBR1の二重欠損細胞で特異的にゲフィチニブの細胞遊走抑制作用が消失した。また、マトリゲルを用いた細胞浸潤アッセイにより、基底膜を通過するがん細胞の浸潤を評価すると、p62とNBR1の二重欠損細胞では、ゲフィチニブ処置によるがん細胞浸潤の抑制作用がほぼ消失していた。即ち上記の結果は、ゲフィチニブがEGFRに依存せず、p62とNBR1を介してがん細胞の遊走・浸潤を抑制するという新たな機構が存在することを示している。本会では、このゲフィチニブによる新たな抗腫瘍作用に関する最新の解析結果について、p62とNBR1依存的に形成されるALBのがん細胞浸潤抑制における機能的役割も含めて発表したい。

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