日本毒性学会学術年会
第47回日本毒性学会学術年会
セッションID: P-208
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メフェナム酸による肝障害を減弱させるヒト肝臓酵素の同定
*深見 達基小木曽 巧朗Zhongzhe CHENG小西 慶吾中野 正隆中島 美紀
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抄録

【目的】解熱鎮痛薬メフェナム酸 (MFA) は副作用として肝障害が報告されており、CYP1A2/2C9により生成されるキノンイミン体が原因の1つとして考えられている。本研究ではヒト肝臓にMFAのキノンイミン体生成を抑制する酵素が存在するか検討し、同定することを目的とした。

【方法】CYP1A2/2C9発現系により生成したMFAのキノンイミン体をGSH抱合体として検出し、GSH非含有ヒト肝臓サイトゾル (HLC) またはP450不活化ミクロソーム (HLM) を添加した際のGSH抱合体減少率を評価し、減少率が大きかったHLCから責任酵素を精製した。スーパーオキシドジスムターゼ1 (SOD1)をノックダウンさせたCYP1A2過剰発現HepG2細胞にMFAを処置し、細胞毒性を評価した。

【結果・考察】CYP1A2により生成したMFAキノンイミンのGSH抱合体はHLC添加により有意に減少し、その減少度はCYP2C9により生成したGSH抱合体のものより大きかった。HLCからのタンパク質精製、および精製酵素を用いた検討より、SOD1がMFAのキノンイミン体生成を低減させる酵素であることを明らかにした。SOD1はMFAの他にトルフェナム酸やフルフェナム酸などのフェナム酸系NSAIDsのキノンイミン体生成を抑制することを明らかにした。フェナム酸系NSAIDsのキノン体生成時にスーパーオキシドが必要であり、それをSOD1が消去することによりキノン体生成が抑制されることが考えられた。SOD1をノックダウンしCYP1A2を過剰発現させたHepG2細胞においてMFAによる毒性がコントロール群と比較して有意に高く認められたことから、SOD1はMFAのキノンイミン体生成量を減少させることで細胞毒性を減弱させることが示された。SOD1がキノンイミン体生成を抑制する解毒酵素として働くという新たな知見を与えた。

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