日本毒性学会学術年会
第47回日本毒性学会学術年会
セッションID: P-215
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実験動物における薬物標的因子の発現量および分布の評価に向けたトランスクリプトームマップの構築
*加藤 哲希Matthew MARTINDennis J PELLETIERMark M GOSINKPetra H KOZA-TAYLORKim P KOWSZIngrid D PARDOWilliam MOUNTSJon C COOKNagappan MATHIALAGAN
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抄録

【目的】非臨床安全性評価に用いる動物種における薬物の標的分子の組織発現パターンを正しく理解することは、前臨床毒性試験の動物種選択や、毒性試験結果のヒトへの外挿性を考察する上で重要である。この重要性は、欧州医薬品庁発行のFIHを含む早期臨床試験に関するガイドライン(2017)でも述べられている。RNAシーケンス(RNA-Seq)技術の発展により、標的分子の遺伝子発現に関する高品質データが得られるようになり、特にヒトにおいて、そのデータは様々な組織での遺伝子発現パターンを明らかにするために用いられている[例:Genotype Tissue Expression (GTEx) project]。本研究では、GTExなどのヒト組織のトランスクリプトームマップに相当する動物の組織網羅的な遺伝子発現アトラスを構築することを目的とし、RNA-Seq法により複数の実験動物種の広範な組織の標的遺伝子発現を評価した。

【方法・結果】ラット、イヌおよびサル(雌雄各3例)から各動物種あたり60種以上の組織(そのうちヒトと重複するのは45種類)を採取して遺伝子発現解析に供した。組織採取後、RNA回収、ライブラリー調製、シーケンシング、アライメントおよび計数の手順で転写産物を解析した。その結果、各組織における発現遺伝子の組織特異性について、ヒトと各動物種の相関性は約60%であった。

【考察・展望】低分子薬やバイオ医薬品の安全性評価およびde-risking検討に用いる“薬理学的に適切な”動物種を選択するために、通常の機能評価データに加えてこれらのデータセットを用いることが有用となる可能性が考えられた。今後は、マウスの各組織についても同様に遺伝子発現解析を行う等データセットの充実化を図り、より信頼性の高い実験動物版のトランスクリプトームマップの構築を目指す。

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© 2020 日本毒性学会
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