主催: 日本毒性学会
会議名: 第47回日本毒性学会学術年会
開催日: 2020 -
【目的】当研究室では、妊娠ラットへの 2,3,7,8-tetrachlorodibenzo-p-dioxin (TCDD) 曝露が、育児期に prolactin 発現抑制を通して育児行動を低下させる事実を見出している。さらに、上記の行動と prolactin レベルの抑制が次世代以降の雌児にも継承されることを報告した。育児行動は、世代を越えて継承されうる行動形質である。またprolactinが乳腺組織発達の促進的役割を担うことに関連して、TCDD曝露母体では、乳腺組織の発達抑制が確認された。本研究では、母体同様prolactinレベルの低下が見られ、乳腺発達の抑制が推定される次世代雌児に着目して、TCDDが 次世代以降の雌児の出産後の育児行動と母乳量に影響を及ぼす可能性について検討した。
【方法】妊娠 15 日目のWistarラットにTCDD (1μg/kg) を単回経口投与して、第1、2世代雌児を妊娠させて、雌児より組織と血液を採取し、母および雌児の育児行動を評価した。mRNA は real-time RT-PCR、ホルモン濃度は EIA にて解析した。育児期にあたる第1、2世代雌児出産5日目に母乳を採取し、その母乳の分泌重量を測定した。
【結果及び考察】TCDD曝露母体より得た第1、2世代の雌では、prolactinレベルの低下とともに育児行動 の一つである児なめ行動が抑制された。また、出産5日目の第1、2世代雌児において母乳の分泌量が、それぞれ減少傾向、および減少することが明らかになった。これらの結果から、TCDD母体曝露は血中prolactinレベルを低下させるとともに母乳分泌と育児行動を低下させること、これらは世代を越えて継承しうることが明らかになった。