日本毒性学会学術年会
第47回日本毒性学会学術年会
セッションID: P-22E
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ナノ銀粒子による神経細胞でのアミロイドβ発現増加とその誘導機序の解明に向けた検討
*東阪 和馬笠原 淳平櫻井 美由紀豊田 麻人衛藤 舜一辻野 博文長野 一也堤 康央
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抄録

ナノマテリアル(NM)は、高い組織浸透性など、様々な有用機能を発揮する一方で、その微小さゆえに、従来素材とは異なる体内動態や予期せぬ生体影響を発現することが危惧されている。この点、これまでに我々は、粒子径10 nmの銀ナノ粒子(nAg10)をマウスに28日間連日で経鼻曝露することで、nAg10がマウス脳内にまで移行し得ることを明らかとしてきた。本知見は、曝露したnAg10が脳神経系に対して予期せぬ影響をおよぼすことを示唆するものである。本背景のもと、昨今の疫学研究において、環境中の微粒子曝露とアルツハイマー病の発症・進展との連関が示唆されており、環境中の微粒子と同様に、NMにおいても神経疾患に関わるハザード解析が急務である。そこで本研究では、神経細胞モデルであるSH-SY5Y細胞を用い、nAg10によるアルツハイマー病態の形成におよぼす影響とその誘導機序の解明を試みた。まず、アルツハイマー病の原因物質としても知られるAmyloidβの発現におよぼす影響を解析したところ、nAg10の用量依存的なAmyloidβの増加と、Amyloidβの前駆体であるAPPの発現増加が示された。次に、その誘導機序の解明を目的に、抗酸化剤であるNアセチルシステイン(NAC)を作用したところ、nAg10曝露により認められたAPPの発現増加が、NAC添加により抑制されることが明らかとなり、nAg10によるAPP発現増加に酸化ストレス誘導が関与していることが示唆された。従って現在、nAg10による酸化ストレス誘導が、細胞内蛋白質の分解系を撹乱させる可能性を視野に、細胞内エンドソームの機能やアルツハイマー病態におよぼす影響について追究し、NM曝露と神経疾患の発症・進展との連関について解明を試みている。本研究を推進することで、NMの脳神経系に対する安全性情報の集積に貢献することを期待する。

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