主催: 日本毒性学会
会議名: 第47回日本毒性学会学術年会
開催日: 2020 -
【背景及び目的】
がん免疫療法の評価系として用いられている皮下移植モデルは、がん本来の臓器におけるがん形成を解析できないという異所性の課題がある。化学発がんモデルは、臓器特異的腫瘍を形成し、免疫機構は保たれ、原発巣からの転移巣を解析できる利点がある一方で、移植モデルと比べ腫瘍形成に時間を要すことが懸案とされている。そこで、遺伝子改変により発がん誘導されたマウスと二段階化学発がんモデルを組み合わせたTg-rasH2マウスの肺発がんモデルを用いて、腫瘍形成期間及び腫瘍細胞上に免疫チェックポイント阻害剤のリガンドであるPD-L1の発現について検討した。
【方法】
雌のTg-rasH2マウス(7週齢)に、ENU(N-nitroso-N-ethylurea:120 mg/kg)を実験開始日に1回腹腔内投与し、ENU投与1週間後よりBHT(Butylhydroxytoluene:400 mg/kg)を1週間に1回、計5回強制経口投与した。実験開始5及び7週後に其々2匹、9週後に9匹を剖検し、摘出した全動物の肺の各葉から一定部位を切り出し、免疫組織化学的に腫瘍細胞上のPD-L1の発現について臨床に準じCPS(Combined Positive Score)により評価した。
【結果】
実験開始後第5、7並びに9週の剖検において、2/2、2/2、9/9例で肺腫瘍が観察され、第5週より第7週、第9週と時間の経過とともに腫瘍面積、腫瘍発現の増加が見られた。PD-L1の発現をCPSで評価したところ低~中程度の発現を示した。
【まとめ】
既報(Umemura T. et al. 2006)における同様のモデルでは腫瘍形成に9週とのことであったが、今回の実験では5週と極めて早期における腫瘍の形成と、肺腫瘍にPD-L1の発現を確認できたことは、抗腫瘍評価モデルとしての有用性が示唆された。