日本毒性学会学術年会
第47回日本毒性学会学術年会
セッションID: P-42E
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ブロモクリプチンによる血糖低下作用の新規機序
*沓掛 貴矢岸田 知行横井 亮平相馬 晋司
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抄録

【背景・目的】

ドパミンD2受容体作動薬であるブロモクリプチンは,半世紀以上前に登場したパーキンソン症候群及び高プロラクチン血症に対する治療薬である。近年,本薬は血糖降下作用を有することが報告され,米国においては2010年に2型糖尿病治療薬として製造販売承認されている。この血糖降下は副交感神経を介した中枢神経系の作用であると考えられているが,詳細な機序は不明である。本研究では,ブロモクリプチンによる血糖降下作用について,肝臓における糖新生に着目し,検討を行った。

【方法】

In vivo試験:雌性Wistarラットにブロモクリプチンを2週間反復経口投与し(投与量:5,15,45,135 mg/kg/day),血糖値を測定した。また,本ラットより肝臓を摘出し,糖新生の律速酵素遺伝子であるG6Pase及びPEPCK1のmRNA発現量をリアルタイム RT-PCR法により定量した。In vitro試験:ヒト肝癌由来細胞株であるHepG2細胞にブロモクリプチンを含む各種ドパミン受容体作動薬を処置し,G6Pase及びPEPCK1 mRNAの発現量を定量した。また,ドパミンD2受容体阻害剤との共処置による影響についても検討した。

【結果・考察】

ブロモクリプチンを投与したラットにおいて,投与量依存的な血糖値の低下及び肝臓におけるG6Pase 及びPEPCK1 mRNA発現量の減少が認められた。また,ブロモクリプチンを含む各種ドパミン受容体作動薬を処置したHepG2細胞において,G6Pase及びPEPCK1 mRNA発現量が減少した。さらに,ドパミンD2受容体阻害剤との共処置により,ブロモクリプチンによるそれらのmRNA発現量の減少は抑制された。以上のことから,ブロモクリプチンは肝細胞において直接的に糖新生を抑制している可能性が示唆され,血糖降下作用の機序解明に新たな知見を与えることができたと考える。

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