日本毒性学会学術年会
第47回日本毒性学会学術年会
セッションID: P-67S
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化学物質曝露がDrosophila melanogasterに与える影響の解析
*永井 勇真藤原 凛太郎藤尾 克則吉田 京介Binh Duy TRAN亀井 加恵子
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抄録

[緒言]キイロショウジョウバエ(Drosophila melanogaster)は同時に大量に飼育ができ、世代間隔も10日程度であることから、大規模な遺伝学的スクリーニングが可能である。ヒトの疾病関連遺伝子の75%もの相同遺伝子を持ち、細胞内シグナルも共通であるためショウジョウバエは哺乳動物のモデルとして有用である。 

 本研究は、ショウジョウバエを用いて、化学物質曝露による生体への影響を明らかにすることを目的としている。化学物質としては、ホルムアルデヒドガスおよびキシレンガスを用いた。

[実験] 羽化後24時間以内のキイロショウジョウバエ(Canton S)を餌入りのバイアルに入れ、デシケーター内で飼育した。ホルムアルデヒド(FA)ガス(8 ppm)あるいはo-キシレン(XY)ガス(2 ppm)をデシケーター内に注入し、ショウジョウバエを曝露した(1回/日)。一定期間曝露後、ショウジョウバエを粉砕・抽出し、各定量実験に使用した。

[結果と考察]活性酸素種、活性窒素種の定量解析の結果、曝露期間20日目のショウジョウバエで非曝露群と比較してXY曝露群曝露で有意に増加した。両曝露群において、いくつかの抗酸化関連タンパク質のmRNA発現量が有意に増加し、その変化はXY曝露群で大きかった。細胞老化マーカーである老化関連β-ガラクトシダーゼ活性は、曝露20日目において両曝露群で有意に増加した。また、細胞老化関連遺伝子のmRNA発現量は、曝露10日目以降に両曝露群で有意に増加した。

以上の結果より、少なくともXY曝露によって酸化ストレスが増加し細胞老化が亢進されていることが示唆された。FA曝露群については、XY曝露群よりも酸化ストレスは小さいことから、DNA-タンパク質クロスリンク損傷による細胞老化亢進の可能性が考えられる。

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