日本毒性学会学術年会
第47回日本毒性学会学術年会
セッションID: P-68S
会議情報

ポスター
セフェム系抗菌薬による腎毒性発現機構の解明
*鍵 智裕関口 雄斗平田 祐介野口 拓也松沢 厚
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録

副作用が少なく安全性が高いとされるセフェム系抗菌薬は、臨床現場においては欠かすことのできない薬剤である。しかし、セフェム系抗菌薬は稀に肝障害や腎障害などの重篤な副作用を引き起こすことが報告されている。特に腎障害は、セフェム系抗菌薬の細胞毒性に起因する急性尿細管壊死(ATN; acute renal tubular necrosis)が原因とされているが、その発症機序はほとんど明らかにされていない。一方、我々は最近、セフェム系抗菌薬であるcefotaximeが、活性酸素種(ROS)依存的にALIS(aggresome-like induced structures)と呼ばれるユビキチン化タンパク質凝集体の形成を促進し、特に核内に蓄積したALISが、細胞毒性の原因となっていることを突き止めた。そこで我々は、ATNの発症機構に対するALISの関与について様々なセフェム系抗菌薬を用いて網羅的解析を行った。

臨床現場で汎用されている11種類のセフェム系抗菌薬を用い、尿細管上皮細胞を含む各種培養細胞に対する細胞障害の誘導機構を解析した。その結果、細胞毒性を持つ全てのセフェム系抗菌薬がROS産生を介して細胞毒性を惹起していることが判明した。さらに興味深いことに、細胞毒性を示さないセフェム系抗菌薬を処置した細胞ではALISの形成が見られないが、細胞毒性を惹起するセフェム系抗菌薬は例外なくALISの核内蓄積を顕著に亢進した。以上の結果から、ROS依存的なALISの形成は、細胞毒性を惹起するセフェム系抗菌薬全般に共通した特徴であり、核内に蓄積したALISがセフェム系抗菌薬によるATNの発症に寄与する可能性が示唆された。現在、セフェム系抗菌薬で引き起こされるATN発症へのALISの関与について、動物モデルでの検討も含め、詳細な解析を進めている。

著者関連情報
© 2020 日本毒性学会
前の記事 次の記事
feedback
Top