日本毒性学会学術年会
第47回日本毒性学会学術年会
セッションID: P-76S
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ヒト上皮成長因子受容体2過剰発現乳がんの悪性化における芳香族炭化水素受容体の役割
*齋藤 菜緒山下 直哉菅野 裕一朗出川 雅邦根本 清光
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抄録

芳香族炭化水素受容体(AhR)は、ダイオキシンなど種々化学物質の毒性発現に関与する受容体型転写因子として知られている。AhRは通常、細胞質に存在しており、リガンドの結合により活性化し核に移行する。当教室の菅野らは、ヒト乳がん由来細胞株MCF-7より樹立したヒト上皮成長因子受容体2(HER2)安定発現細胞株(HER2-5細胞)において、AhRの発現量増加及び恒常的な核局在化が認められること、またAhRを介した炎症性サイトカインinterleukin(IL)-6、IL-8の誘導を促進することを報告しており、AhRがHER2陽性乳がんの悪性化を惹起する要因の一つであると考えられた。本研究では、HER2シグナルによる乳がんの悪性化機構におけるAhRの役割を明らかにするため、HER2-5細胞及びノックアウト細胞(HER2-5AhRKO細胞)を用いて、AhRによる遺伝子発現制御をクロマチンレベルで比較検討した。Assay for transposase-accessible chromatin sequencing(ATAC-seq法)により網羅的にゲノム上のオープンクロマチン領域を同定及び解析した結果、両細胞で、オープンクロマチンの変動が認められる領域が複数個所見つかった。さらに、それらクロマチン領域の周辺に位置する候補遺伝子の mRNA 発現量を両細胞で比較した結果、それら発現にAhRが関与する遺伝子が複数個存在することを見出した。現在、それら遺伝子発現制御及びそれら遺伝子産物の乳がん悪性化促進機構への関与について解析を行っている。

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