日本毒性学会学術年会
第47回日本毒性学会学術年会
セッションID: S13-2
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シンポジウム13
創薬研究におけるReductionの取り組み
*渡邊 利彦
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抄録

3R’sの一つであるReductionはReplacementやRefinementの結果として現れることが多くReductionそのものをテーマとして論じることは難しい。

3R’sが2005年に動物愛護管理法に明記されてから数十年が経過している。その間に製薬会社の合成技術は格段に進歩し、当時に比べて莫大な数の化合物が合成されるようになった。しかし合成数の増加に比例して動物使用数が大幅に増えているわけではない。むしろ動物使用数の推移は横ばいか減少している。このことから考えて、動物使用数の削減に全く取り組んでいないとは言えないと演者は考えている。

例えばin vitroスクリーニング技術の進歩が結果的に動物使用数の増加に歯止めをかけてきたと考えられる。3R’sの取り組みは実験動物関係者がもっぱら積極的に努力してきており、化合物合成等を専門とする研究者が積極的に3R’sを意識したことがあっただろうか。 

In vitroの研究者は単に化合物合成数やスクリーニング技術の効率化を目指していたのではないだろうか。もし、このような研究者に3R’sを理解し、協力してもらうことが出来れば、更に良い結果が生まれたのではないだろうか。

そのためには、創薬開発すべてに係る人々が3R’sの取り組みを理解し参加するような仕組みが必要である。例えば、欧州で行われている3R’s awardsの取り組みや3R’sを啓発するための3R’s day等のイベントである。Awardsの中には研究資金などを提供するものもある。研究者が自身の研究を3R’sの視点から見直す良い機会を提供している。

また、近年ではマイクロ流体ディバイスやオルガノイドといった代替技術の発展が期待される。3Dプリント技術による三次元構造培養等の技術を組み合わせれば、マイクロチップに人体そのものを再現することも夢ではないかもしれない。こういった夢の技術について動物福祉の視点を積極的に取り入れ、後押しすることで3R’sにつながる研究を促進していきたい。その為の仕組みづくりを早急に行う必要があるのではないだろうか。

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