日本毒性学会学術年会
第47回日本毒性学会学術年会
セッションID: S17-3
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シンポジウム17
VSDイメージングによる神経回路毒性の網羅的評価
*冨永 貴志冨永 洋子
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抄録

脳は、神経細胞でやり取りされる膜電位変化を介した複雑で精緻な情報処理を特徴とする演算器官である。神経細胞からなる神経演算は、多数のシナプスを介した樹状突起膜でのシナプス電位の生成とその統合と、その結果として活動電位の発生、さらには軸索を通した活動電位の伝導によって行われている。神経細胞同士の情報のやり取りから起こる脳の活動を知るためには、この神経細胞同士から作られる局所神経回路での情報演算、さらには局所神経回路同士の情報のやり取りについて知る必要がある。このような多数の膜要素の情報=膜電位を読み出す手法として、膜電位感受性色素(voltage sensitive dye ; VSD)による光計測法がある。この手法は、1970年代はじめに開発され、近年になってようやく多くの研究室で使われるようになってきた。このシンポジウムでは、我々の用いる単光子広視野(single photon wide-field)での光計測でできることについて紹介し、特に低用量/低濃度暴露による発達神経毒性評価系における利点について議論する。低用量/低濃度暴露による発達神経毒性は、脳の発生・発達期に介入して起こる脳機能の変調である。このような神経毒性は、発生・発達期に間違った特定の信号入力で起こる回路の再編成に起因しており、行動計測のようなアウトプットの変調では計測できる毒性である。その機能の変化を読み解く手法として、神経回路の働き方自体を計測する手法として、網羅性、即時性の上で優れているのが光計測による神経回路の機能計測である。本発表では、ビスフェノールA(BPA)類の、周産期慢性投与、急性投与による影響の光計測による海馬神経回路の機能計測例を述べる。さらに、海馬のみならず大きな神経回路で計測できる単回計測をずっと経時的に計測した時に観察可能な、たまにしか起こらない神経回路連絡、興奮振動、回路可塑性などの現象について紹介し今後の応用について展望を述べる。

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