日本毒性学会学術年会
第47回日本毒性学会学術年会
セッションID: S17-2
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シンポジウム17
低用量/低濃度化学物質の発生-発達期ばく露による情動認知行動毒性~情動認知行動毒性評価系の国際標準化に向けた対応~
*種村 健太郎齊藤 洋克古川 佑介相﨑 健一北嶋 聡菅野 純
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抄録

 行動異常を伴う中枢神経系の発達障害の一因として、胎児期あるいは小児期における化学物質のばく露が疑われている。しかしながら、それを未然に発見する為の神経毒性試験は化学物質のばく露対象を主に成熟動物としていること、行動異常の検出について心理学的記載に留まるものが多く、客観性および定量性に欠けるものであること、神経科学的メカニズムとの対応が不明であること、等の問題点が指摘されてきた。

 この問題に対応すべく、我々はこれまでに、マウスを用いて、(1)実際に発生-発達期マウスに対して神経作動性化学物質あるいは環境化学物質を投与した後の成熟後の行動異常を捉える試験プロトコールを確立するとともに、(2)オープンフィールド試験、明暗往来試験、高架式十字迷路試験、条件付け学習記憶試験、プレパルス驚愕反応抑制試験の5つの行動解析試験を組み合わせたバッテリー式の行動解析によって情動認知行動異常についての客観的かつ定量的な検出系を構築し、(3)遺伝子発現解析や、神経幹細胞動態解析、あるいは神経回路機能解析等により、検出された行動異常に対応する神経科学的物証の収集を重ねている。

 本シンポジウムでは、これまでの研究成果に加え、ビスフェノール類としてビスフェノールA、ゴム老化防止剤であるMBMTBPおよびBBMTBPを用いた解析例について報告する。これらのビスフェノール類を低濃度にて妊娠期から授乳期の雌マウスに慢性的に飲水投与し、得られた雄産仔マウスについて成熟後の情動認知行動解析を行った結果と、対応する脳海馬の遺伝子発現プロファイルとの関連について検討する。また、本シンポジウムでは、国際的な情動認知行動毒性評価系としての提案に関わる幾つかの問題点と、その解決にむけた取り組みについて議論したい。

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© 2020 日本毒性学会
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