日本毒性学会学術年会
第47回日本毒性学会学術年会
セッションID: S18-1
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シンポジウム18
in vitroスクリーニング試験がDILIを回避できなかった事例
*福井 英夫
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抄録

薬物性肝障害(DILI)の発現メカニズムとして、トランスポーター阻害、ミトコンドリア機能障害あるいは反応性代謝物などの関与が提唱されている。そのため、製薬会社は医薬品開発初期段階からトランスポーター阻害研究、ミトコンドリア機能障害研究あるいは反応性代謝物の検出をスクリーニング研究のひとつとして導入し、肝毒性を回避した化合物を選別している。

II型糖尿病の治療薬として開発していたGPR40アゴニストfasiglifamは米国でのphase IIIの最終段階で肝障害がみられたため、武田薬品は自主的に開発を中止した。Fasiglifamを投与した約9100名の患者のうち、Hy’s Law caseを基準にして重篤な肝障害を示した患者数は3例であった。非臨床試験ではイヌを用いた反復投与毒性試験で肝毒性が検出されていたが、臨床投与量との安全マージンは十分に確保されていた。また、イヌでみられた肝毒性の発現機序はすでにphase III前には解明されており、臨床試験でみられた肝障害がイヌと同じ機作で起こったとは考えられなかった。臨床試験でみられた肝障害の発現機作を説明するために、in vitroの試験系を用いたレトロスペクティブ研究の結果が報告されている。BSEP阻害及びミトコンドリア機能障害がヒトでみられた肝障害の原因であると報告しているグループもある。最初に、in vitro試験系をスクリーニング段階で実施しておれば、fasiglifamのphase IIIでみられた3例の重篤な肝障害は回避できたかを考察する。次に、in vitro試験系を化合物スクリーニング段階から導入することの意義について考察する。最後に、in vitroスクリーニング試験系を導入することで、有用な化合物を開発初期段階で中止にしていないか、また、評価系自体も最適なものになっているのかなどを考察したい。

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