日本毒性学会学術年会
第47回日本毒性学会学術年会
セッションID: S19-3
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シンポジウム19
メチル水銀による神経細胞過剰活性化と部位特異的な神経変性
*藤村 成剛臼杵 扶佐子
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抄録

メチル水銀の成人期暴露は、脳において部位特異的な神経毒性を誘発する。本研究では、成人水俣病患者と同様に大脳皮質の深層部 (特に第IV層) に特異的な神経変性を示すメチル水銀中毒マウスモデルを用いて、神経活動に関連するシグナル伝達経路の部位特異的発現について研究を行った。まず、免疫組織学的手法を用いて、神経活動マーカーであるc-fosおよび脳由来神経栄養因子(BDNF)の脳内各部位における発現レベルの時間経過について測定を行った。その結果、両神経活動マーカーはメチル水銀暴露によって大脳皮質深層部で特異的に増加し、その増加は神経変性に先行した。さらにウェスタンブロット解析を行った結果、c-fosの発現はp44/42 MAPK, p38 MAPKおよびPKA経路が活性化した後、CREBリン酸化の亢進によって引き起こされることが明らかになった。なお、小脳と海馬では大脳と同等レベルの水銀濃度が示されるにもかかわらず、神経活動マーカーの増加および神経病変は検出されなかった。以上の結果は、メチル水銀によって引き起こされる大脳皮質深層部における神経変性が、“MAPKおよびPKA/CREB経路の活性化に引き続くc-fosおよびBDNFの発現増加による部位特異的神経活動亢進によって引き起こされる” という興味深い可能性を示唆している。

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