主催: 日本毒性学会
会議名: 第47回日本毒性学会学術年会
開催日: 2020 -
【目的】
未分化多能性幹細胞は奇形腫形成リスクを有することから、その残存の有無を検出することは多能性幹細胞由来細胞加工製品の造腫瘍性評価において重要である。今回、未分化多能性幹細胞残存のin vitro検出試験の一つである培養増幅法、すなわち、未分化多能性幹細胞の増殖に有利な培養条件下で培養することにより、同細胞の残存を検出する手法に関して、多施設で検証した。
【方法】
既報における同法の検出限界値(0.001%: 1x106の分化細胞にスパイクした10個の未分化多能性幹細胞を検出)の再現性を、複数のヒトiPS 細胞株及び培養条件を用いて多施設にて検証した。また、培養増幅法の前処理として、多能性幹細胞マーカーであるTRA-1-60に結合するMicroBeadsを用いてMACS(Magnetic-Activated Cell Sorting)法にて、未分化多能性幹細胞を濃縮することで、検出感度を向上する手法を開発し、多施設で検証した。
【結果および考察】
全施設で、いずれのヒトiPS 細胞及び培養条件においても、0.001%の検出限界値の再現性が確認された。また、MACS法により未分化多能性幹細胞を濃縮することで、0.00002%の検出感度が得られることが実証された。以上、培養増幅法は残存する未分化多能性幹細胞のin vitro検出試験として、高感度かつ堅牢な試験系であり、MACS法による前処置は、検出感度向上に有効な手段であることが確認された。