日本毒性学会学術年会
第47回日本毒性学会学術年会
セッションID: S29-1
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シンポジウム29
レット症候群原因因子MeCP2のマイクロRNAを介した神経幹細胞分化制御機構の解明
*中島 欽一
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抄録

 Rett症候群 (RTT) は広汎性神経発達障害の1種であり、主にmethyl-CpG binding protein 2(MECP2)遺伝子変異によって発症する。我々は以前に、MeCP2がDrosha複合体と会合し、特定のmiRNA(miR-199a)のプロセシングを促進することで、ニューロンの機能を制御すること発見した。今回我々は、このMeCP2/miR199a経路が神経幹細胞の分化をも制御していることを明らかにしたので報告する。

 まず、生後1日目のMeCP2欠損及びmiR-199a欠損海馬のシングルセル解析を行った結果、それぞれの遺伝子欠損海馬ではニューロン細胞集団が野生型より減少していた一方で、アスロトサイト細胞集団が増加していることがわかった。そのため、それら神経系細胞の元となる胎生期神経幹細胞を単離し、分化誘導を行ったところ、各遺伝子欠損神経幹細胞では共にニューロン分化が減少、アストロサイト分化が増加していることが明らかになった。またこれは、miR-199aの標的である転写因子Smad1のタンパク質増加によるBMPシグナルの活性化亢進によるものであることを突き止めた。さらに、RTT患者由来iPS細胞を用いて作製した脳オルガノイドにBMPシグナルの阻害剤を添加したところ、その表現型を改善できることが示された。

 これらの結果から、MeCP2はmiR-199aを介して神経幹細胞の分化を制御しており、MeCP2/miR-199a/SmadシグナルカスケードがRTT病態において重要な役割を果たすことが示唆された。

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