日本毒性学会学術年会
第47回日本毒性学会学術年会
セッションID: S29-2
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シンポジウム29
脊椎動物の初期発生とエピジネティックス
*武田 洋幸
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抄録

エピジェネティック修飾は遺伝子の発現制御に重要な働きを持っており、全能性の維持、細胞分化、発生、種々の疾病の発生に関与している。エピジェネティック修飾のうち、特にDNA鎖のシトシンに対するメチル化(DMAメチル化)およびヌクレオソームを構成するヒストン修飾が最もよく研究されている。これらのエピジェネティック修飾は、細胞分裂の際に娘細胞へ受け継がれることが知られており、第二の遺伝情報とよばれることがある。また生物個体は、環境から様々な刺激を受容、応答し、エピジェネティック修飾としてゲノム上に記憶していることが近年明らかになっており、特に個体の発生、成長期に受けた環境刺激は、その刺激がなくなっても、生涯にわたり影響が続く場合がある。エピジェネティック修飾に加えて、最近は、クロマチンの3次元構造が遺伝子発現に影響を与えるとして、エピジェネティック因子の一つとも考えられるようになってきた。エピジェネティック修飾やクロマチン構造とその変化は、培養細胞や種々の分化した細胞で詳細に調べられているが、初期発生での研究はまだ限られている。特に大量の胚を得ることが難しい哺乳類では、解像度の高い、定量的データが得られていない。我々は、ゲノムサイズが小さく、大量の胚が比較的容易に得られる小型魚類、メダカを用いて初期発生におけるエピジェネティック修飾とクロマチン構造の変化を解析している。

今回の発表では、通常および少数細胞のChIP-seq、定量的ChIP-seq (spike-in)そしてHiC法を駆使して得られたメダカ初期胚でのエピジェネティック修飾とクロマチン構造の変化を報告し、その意義を考察したい。さらにすでに報告があるマウスの結果との比較から、種差が大きいと言われている脊椎動物初期胚でのリプログラミングの普遍性と多様性を議論したい。

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