日本毒性学会学術年会
第47回日本毒性学会学術年会
セッションID: S4-1
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シンポジウム4
硫黄を利用した生体防御機構とエネルギー代謝
*本橋 ほづみ
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抄録

KEAP1-NRF2制御系は、生体における酸化ストレス応答において中心的な役割を果たしている。KEAP1は硫黄原子の反応性を利用したレドックスセンサーであり、NRF2は硫黄原子の反応を制御する酵素群のマスター転写因子である。このように、KEAP1-NRF2制御系は硫黄代謝を利用した生体防御系であるといえる。NRF2の生体防御における重要性は、Nrf2欠損マウスを用いた解析や、ヒトにおけるNRF2遺伝子の一塩基多型の報告から明らかにされている。NRF2の活性化は生体の抗酸化機能を強化することで、加齢関連疾患の予防や改善に有効である。また、NRF2による抗炎症作用やミトコンドリアの機能促進作用も、こうしたNRF2による抗老化作用に貢献していると考えられる。NRF2がどのようにミトコンドリアの機能促進をもたらすのかについては明確な理解はなされていなかった。最近我々は、その一つのメカニズムとして、NRF2による硫黄代謝の促進があることを見出した。NRF2はシスチントランスポーター遺伝子を活性化し、細胞外からのシスチンの取り込みを促進することで、細胞内でのシステインを増加させる。システインはシステインパースルフィドに変換されることで、ミトコンドリアにおけるエネルギー代謝の基質として利用され、ミトコンドリアの膜電位形成に大きく貢献することがわかった。NRF2による硫黄代謝制御は、生体防御機構に加えて、ミトコンドリアのエネルギー代謝にも貢献していると考えられる。

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